履歴書だけでは伝わらない!「ユニークな提出物」で個性を輝かせる企業の戦略

導入:なぜ企業は「個性」を求めているのか?

従来の就職活動では、標準化された履歴書やエントリーシート(ES)を通じて、学歴や職務経歴、定型的な自己PRが評価の中心でした。しかし、近年の採用市場では、形式的な文書だけでは測れない「個人の持つ具体的な能力」や「熱量」、「独自の視点」を重視する傾向が強まっています。

この流れの中で、通常の履歴書や記述式のエントリーシート(ES)に加え、企画書、作品のURL、あるいは動画の提出といった、個性や能力を具体的に示す「ユニークな提出物」を選考ステップに組み込んでいる企業が何社かあります。

これらのユニークな提出物は、応募者が持つスキル(例:プログラミング、プレゼンテーション、企画力)をアウトプットの質で直接評価することを可能にします。特に、クリエイティブ職、エンジニア職、そして企画力や対人スキルが求められる職種で、この傾向は顕著です。

特に目を引く提出物を求めている企業は以下の通りです。

ユニークな提出物を求める企業一覧

企業名 ポジション ユニークな提出物 備考
AOI Pro. エンタメコンテンツ制作アシスタントプロデューサー 入社後に実現したい企画やプロジェクトの1案の提出。 必須提出。A4用紙1枚(横向き)のPDF形式で作成し、GoogleドライブのURLを提出する必要があります。映画、ドラマに限らずエンタテインメントのコンテンツであれば内容は自由とされています。
セガ プログラマ 制作物(アプリケーションやゲーム等)のURLまたはデータの提出。 必須提出。制作した、あるいは制作に関わった作品があれば、閲覧できるURLを記載するか、データをメールで送付する必要があります。また、作品の動画サイトへのURLも可能な限り提出することが推奨されています。
寺岡精工 営業職 最終面接時のプレゼンテーション。 最終面接では、「寺岡精工でどう活躍したいか」をテーマにプレゼンを行っていただきます。希望者には、事前にプレゼンの事前確認面談(作戦会議)のステップが設けられています。
MIXI アプリケーションエンジニア 公開アカウントや制作物のURLの提出。 必須提出。GitHub、Qiitaなどの公開アカウントや開発ブログ、公開しているWebアプリケーションやゲーム等の制作物があれば、URLを回答欄に記載することが求められています。
阪和興業 総合職 自己紹介動画(30秒程度)。 ビデオクエスチョン設定にて、「あなたらしさが伝わる自己紹介を30秒程度でお願いします」という設問が設けられています。
豊島株式会社 総合職 自己PR動画(1分間)。 ビデオクエスチョン設定にて、「自己PR動画を1分間でお願いします」という設問があります(任意)。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント セキュリティ開発エンジニア(Platform Security領域) 機械学習を活用したアプリケーションやプロダクトの概要記述。 必須提出。これまでに機械学習を活用して開発したアプリケーションやプロダクトがあれば、その概要、使用した技術・手法、開発プロセス、工夫点、得られた結果と性能測定結果などを具体的に1000文字以内で記入することが求められています。
デフィマンズ (DeFimans) コンサルタント 現在最も興味のあることの記述。 必須提出。選考に関する追加質問として、「現在最も興味のあること」をジャンルを問わず日本語150文字以内で記述することが求められています。これは短文ながら、応募者の純粋な関心や思考の深さを問うユニークな設問です。

分析:提出物の種類から読み取る企業の求める資質

上記の企業一覧を分析すると、ユニークな提出物は大きく以下の3つのカテゴリに分類され、それぞれ企業が求める資質が透けて見えます。

1. 職務遂行能力の証明(作品・アウトプット型)

企業例: セガ、MIXI、ソニー・インタラクティブエンタテインメント

求められる資質: 即戦力となる専門スキルと、それを使って実際に何かを作り上げた実績。エンジニア職において、GitHubや開発したプロダクトのURLを求めるのは、コーディングスキルや問題解決能力を直接的に評価するためです。

2. コミュニケーション・表現力の評価(動画・プレゼン型)

企業例: 阪和興業、豊島株式会社、寺岡精工

求められる資質: 非言語的な表現力や対人魅力、そして論理を組み立てて伝える力。特に営業職や総合職では、人柄や熱意、顧客や社内へのプレゼンテーション能力を動画や対面プレゼンを通じて評価しています。

3. 企画力・思考の深さの測定(企画書・思考記述型)

企業例: AOI Pro.、デフィマンズ (DeFimans)

求められる資質: 創造性、論理的思考力、そして純粋な知的好奇心。AOI Pro.のように「入社後に実現したい企画」を求めるのは、その業界に対する理解と情熱、そして企業に新しい価値をもたらす可能性を見ています。デフィマンズのように興味の対象を問う設問は、コンサルタントに必要な、物事の本質を見抜く思考の深さを測るものです。

まとめ:ユニークな提出物への対応策

これらの提出物は、応募者にとって大きな負担となる場合もありますが、同時に他の応募者と差別化を図る最大のチャンスでもあります。

企業が形式的な書類ではなく、あえてユニークな提出物を求めるのは、「あなたらしさ」や「ポテンシャル」を本気で見極めたいと考えている証拠です。各企業が求める「提出物の意図」を深く理解し、その枠の中で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、時間をかけて準備することが内定への鍵となります。