ビッグフォー出身の元リクルーターに聞く、キャリアフォーラム選考の裏側

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先日、ビッグフォー出身で、キャリアフォーラム等でもリクルーターとして採用に関わっていた会計士から、ボストンキャリアフォーラムや、ロサンゼルスキャリアフォーラム等の選考の裏側をいろいろ聞く機会があったので、Q&A形式で記事を掲載しておきます。

話を聞く機会があったのは、Pwcニューヨーク事務所を経て、EYのロサンゼルス事務所という経歴の方です。

キャリアフォーラムにおける書類選考は、何を基準に通過させているのですか?

ビッグフォーには、それぞれ優先的に採用を進める「スクールリスト」なるものが存在しています。これらのスクールに在籍している、会計学専攻の学生を、書類選考では優先的に通しています。

学生の皆さんは、自身の学校が、アカウンティングのランキング等でどのくらいの位置にいるか分かっていると思いますので、リストに入っているかどうかは、何となく分かっているのではないでしょうか。

このリストは、学校名だけでなく、分校かどうかもちゃんと見ています。同じ会計学専攻ですが、本校は採用対象だけど、分校はちょっと。。みたいな。

後は、GPAですね。GPAは4点満点だと思いますが、3.4以下の学生はかなりきついです。勉強というフィールドで結果を出していない人は、仕事でも結果を出せる可能性が低いと見られます。

そうすると、有名校の成績上位者以外はチャンスがないということですか?

採用は常に、需要と供給のバランスで決まりますので、会計学を専攻している日本人留学生が多くて、ポジションが少なければそうなりますが、それは年によって変わりますよね。

また、有名校以外で、成績も振るわない学生が優先的に選考を進められる唯一の手段は、会計士試験に既に合格している場合です。既に合格している学生は、会計事務所から見ると、先行投資する必要がありませんから。

逆に言うと、どんなに有名校出身の成績上位者であっても、合格していない学生は、ポテンシャル採用ということになります。

ロサンゼルスキャリアフォーラムとボストンキャリアフォーラムでは、同じビックフォーでも採用枠が違うのですか?

確かに、ロスは西海岸の事務所の採用、ボストンは東海岸の事務所の採用、というイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうとも限りません。どちらのキャリアフォーラムに行っても、西海岸、東海岸の事務所で働くチャンスはあります。

基本的に、採用は事務所単位なんです。選考の最初に、どこの事務所で働きたいか希望を聞いて、その後は、その事務所の人が選考に当たります。

西海岸のロサンゼルスと東海岸のニューヨークは、アメリカを代表する大都市、ということもあってすごく人気がありますが、それ以外の都市は穴場といえるかもしれません。ロスとニューヨークは、多くの学生が応募し、ベストだと思われた学生たちが採用されていきますが、セカンドベストの学生たちには、こちらから「オハイオ」に空きがあるんだけどどう?みたいに、あふれた優秀な学生たちを埋めていきます。

ビックフォーが海外で日本人留学生を採用するメリットは何かあるのですか?

ビックフォーの監査法人が海外で日本人留学生を採用する理由は実にシンプルで、クライアントに日系企業が多いからです。日系企業がクライアントであれば、当然日本語がネイティブで話せるスタッフがいた方が、クライアントから喜ばれます。

これが、ロサンゼルスやニューヨークの事務所が日本人学生を欲しがる理由です。どちらの都市も、日系企業が多く進出していますから。

会計事務所間でカルチャーは違うのですか?

違いますね。私はPwCとEYだけしか分かりませんが、PwCは事務所内に優秀な人が多く、内部競争もたくさんありました。そのためか、いい意味で各自のプライドがとても高かったと思います。EYの方は、もっとチームワークを重視していたという印象です。

インターンシップについて教えてもらえますか?

インターンシップは基本的に採用を前提としている学生たちが集められるので、実際の仕事とは異なる世界を見せられます。要するに、いいところしか見せてくれません。

私もインターンシップに参加しましたが、監査法人の仕事は本当に楽しいと思いました。実際に仕事をしてみると、激務、プレッシャー、内部競争と、まったく違う現実に放り込まれて大変でした。苦笑

ビックフォー後のキャリアについても教えて貰えませんか?

ビックフォーに入った後のキャリアは、大別して2つしかありません。ビックフォー内でひたすらキャリアを上がっていくか、途中で外部に出るか、です。

外部に出る場合は、タイミングが非常に難しいと思います。2年くらいで転職すると、会計のなんたるか、まったく分からないまま外部に出るわけですが、逆にマネージャークラスになってから転職すると、まったくルールの違う分野で結果を出すことを求められるため、苦しい立場に立たされるリスクもあります。

当然、ビックフォーでキャリアを積んでいく中でいろいろな力はついていく訳ですが、どのような力がつくかは、本人の努力もさることながら、どのようなクライアントがアサインされたかによってもかなり異なります。クライアントによっては、財務会計だけでなく、管理会計の分野も学べたりします。

また、逆に、例えば、特殊な会計処理をしている業界の担当になると、超ニッチな分野の知識ばかりが身について、つぶしが効きにくい、というデメリットがあったりします。

監査法人を目指す学生たちに何かメッセージはありますか?

そうですね、声を大にして言いたいのが、当たり前のことですが、自分が本当にやりたいことがなんなのか、真剣に考えて欲しいということです。

単なる憧れだけで就職すると、本当につらい日々を送ることになりますし、実力も伸びません。事業会社に興味があるのであれば、そちらも真剣に考えた方がよいと思います。

監査法人から内定を貰う、ということイコール「成功」などではなく、単なるスタートラインに立ったに過ぎないからです。