米国大学卒業後にオプショナルプラクティカルトレーニング(OPT)で米国に残るリスク

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オプショナルプラクティカルトレーニング(OPT)とは

オプショナルプラクティカルトレーニング(OPT)とは、米国の大学に在学中、または、卒業後に現地で働くことができる制度です。F1等の学生ビザで留学している人は、専攻科目を実践の中でトレーニング利用するという目的の範囲において、最大12ヶ月働く機会を得ることができます。
このサイト上ではOPTについてのこれ以上の詳しい説明は省略しますが、私の友人の何人かは
「卒業後はOPTで1年働くんだ!」
と希望に満ち溢れて卒業していきました。その姿は眩しく、カッコよく写っていました。

しかし、今振り返ってみると、卒業後にOPTを使って働き、その後帰国して就職活動を行うことはとてもリスクが高い選択肢だと感じるようになりました。それを説明するために、まず立場の違いを解説しておきましょう。

・新卒(予定者):卒業しておらず、社会人経験がない大学生
・既卒:大学を卒業してしまった人
・第二新卒:大学を卒業して1−3年未満の人

この3つの立場を理解した上で、リスクを考えてみたいと思います。

理由1:「新卒」ブランドを失うことによる機会損失

「新卒」。それは一生に一度しか使えない魔法のステータスです。なぜなら、大学の新卒(予定者)、というだけで莫大な数の企業に応募する権利を得ることができるからです。例えば、新卒向けのNo.1サイトとなったマイナビに登録されている新卒募集企業の数は約15,000社です。新卒というだけで、これだけの数の企業に応募する権利を持てる機会はまさにこの瞬間しかないのです。

マイナビ

理由2:OPTを経験すると転職市場で戦うことになる

卒業後に経験するオプショナルプラクティカルトレーニング(OPT)は、自分の経歴上、フルタイムの職歴の一つに数えられる可能性が非常に高いはずです。職歴がある場合は、通常新卒マーケットではなく、既卒向けの転職マーケットで自分を売り込む必要が出てきます。

通常の転職マーケットは実務経験重視ですから容赦がありません。転職市場では最大12ヶ月という期間は評価されるにはあまりに短い時間です。よく新卒で入った会社では最低3-4年は働け、と言われるのは根拠があって、どんな仕事でも1人前になるには最低1万時間はその仕事に時間を投資する必要があります。12ヶ月というはあまりに中途半端な期間なのです。

いずれにせよ、卒業後OPTを経験して帰国した人は第二新卒を募集している企業を探すことが多くなりますが、新卒募集企業と比較すると、応募できる企業数はかなり少なくなってしまいます。日本最大の転職サイトであるリクナビNEXTをみてみると、第二新卒募集企業の数は約4000社となっていますが、募集人数が新卒よりもずっと少ないことを考えると、実際にはもっと大きな差がそこにはあります。

リクナビNext

理由3:海外にそのまま残るのはハードルが高い

もちろん、日本に帰国せずにそのままアメリカに残るという選択肢もあります。ただ、この場合はH1ビザをサポートしてくれるスポンサー企業を見つける必要があり、ここが非常に難しいのが実態です。

H1ビザは最も一般的な就労ビザで、このビザがあると通常3年間の滞在期間が認められます。3年後には、もう3年の滞在期間の延長ができる。永住権を申請中の人はさらに1年づつ滞在の延長が可能という仕組みになっています。ただ、このビザには明確な条件があり、職務内容がプロフェッショナルなものであることと決められています。また、ビザ申請者がプロフェッショナルとしての資格(通常学位によって判断)があり、ビザ申請者の学位と職務内容が一致している必要があります。

つまり、なぜその仕事に就くのがアメリカ人ではなく、外国人のあなたである必要があるのかを証明する必要があるのです。

さらに「なぜあなたなのか?」という質問は、ビザが切れる3年のタイミングで再度証明する必要があります。これは法律で決められているらしく、ビザが切れるタイミングで再度企業は募集を出し、もし同程度のアメリカ人応募者がいた場合はアメリカ人が優先される仕組みになっています。例えば、私の友人は統計学を米国の大学院で学び、そのまま現地の病院のリサーチ部門で勤務していましたが、3年目のタイミングで退社を余儀なくされました。
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結論。OPTを経験したければ卒業前に

以上、卒業後のOPTのリスクをいろいろと書いてきましたが、結論としては、OPTをやりたければインターンシップとして卒業前にOPTを経験すれば良いのです。インターンシップとしてOPTを経験すれば、上記のリスクを避けた上で、新卒の就職戦線においてその経験を武器として使うことができます。その際、12ヶ月という期間は少々長すぎるかもしれません。